Artisanship手描友禅ができるまで

染匠/企画考案

美しい京友禅に仕上げるためには、染匠たちが頭の中で画き出したイメージを具体的に表現する必要があります。そのために、美術工芸品などのあらゆる資料をもとに、模様と色彩の配置、バランスを考え、意匠図案を考案します。そしてその衣裳と品種に適した生地の選択をします。

ゆのし(下のし)

白生地に蒸気をあて、たたみジワなどを延ばし、生地幅や長さを一定にそろえ、風合いを良くする作業を「湯熨(ゆのし)」といいます。下絵にとりかかる前準備のひとつとして、このゆのしを行うのは、着物に仕立て上がったとき模様が合口でずれたり、ゆがんだりしないよう、寸法をそろえておくためです。

検尺(けんじゃく)・墨打ち(すみうち)

キモノの袖・身頃・衽など各部分を割り振りするため、それぞれの長さを計り、生地に墨でしるしをつけます。

下絵羽

地のしした生地は、振袖や留袖などの種類に応じて墨打ちを施し、寸法どおりに裁断する。この裁断した生地を仮仕立て(仮絵羽縫)し、染め上がった時に、模様の合い口が、ちぐはぐに成らない様にする。

下絵

絵羽縫した生地に、意匠図案にもとづいて、「青花」の液を下絵筆にしみこませて、下絵を描く。はじめはうすい青花でアウトラインを描き、次第に濃くして正確な模様に近づけます。構図や配色に絵師の鋭い感覚が要求される。模様の下絵が描き終れば、仮絵羽をほどいて、糊置工程へ移される。

糊置(ゴム糸目)

下絵の線に沿って糸目糊を置いていきます。挿友禅の際、染料が他ににじまないように防染する働きがあります。下絵の良さを引き出し、不十分なところは補うくらいの力量が必要です。下絵制作者と同じくらいの絵心を持ち、約束事をすべて心得ていなければならないといえます。

伏糊

糸目糊でかこんだ後、挿友禅をする模様の部分に糊をムラなく置いていき、その上に挽粉(ひきこ)をふりかけます。これは引染をする時、模様の部分が染まらないように防染する働きをします。

引染(地染め)

刷毛引きにより生地面を染色することで、主に防染を施した生地の地染用に用いられる友禅染の工程中、最も広い部分を染めるので、ムラや刷毛跡の出ないよう細心の注意を要ます。

蒸し

引染の終わった生地を蒸し箱に入れ、地色を定着させるために約00度の蒸気で20~50分間蒸します。
濃い地色のものは繰り返し行います。

水元

蒸し上がった生地は、良質の水をたっぷり使ってきれいに洗い流します。これで余分な染料や伏糊を洗い落とし、乾燥させる。

挿友禅

色々な筆と刷毛を駆使して糸目防染された模様のところに色を挿していきます。薄い色から濃い色へ、順に進めていきますが、 刷毛の扱い方しだいでぼかし模様なども染められます。

金彩

金・銀の箔や粉を使い、豪華な雰囲気を作ります。金くくりや押し箔・摺箔・砂子などの技術で京友禅ならではの美しさを表現します。

刺繍

光沢や立体感によって装飾効果を強調する。種々の色糸(主に絹糸)や金銀箔糸を用いて、花鳥、山火、肖像など様々な形をあしらい友禅模様を引き立てる。線の表現として針目刺、針次刺、まつい縫など、面の表現には平縫、片切縫、管縫などがよく用いられる。

補正(地直し)

散り糊、染めむら、伸子汚れ、糊破、合い口のずれ、模様泣きなどは「地直し」が必要で、様々な薬品を使用して習熟した門業者が行う。

上絵羽

全行程を終わったものは、模様の合口を調べるために、着物の形に縫い上げる「上絵羽」を経て完成する。